タシナ・ワンブリさんのこと

あれはもう十五年も前のこと
その日ぼくは 法政平和大学で
「くにと国と大地」という題で
彌永光代が話すのを聞いた


名前は日本人なのに
顔は異国の顔
そして日本語を流暢に話す


話自体も流れるようだったが
いきなりはじまり
どんどん進んでいくその話に
とまどったひとりが話をさえぎって聞いた
「いったいあなたはどういう方なんですか」


中央アジアはハザール族の血を引き
アメリカの先住民族
シャイアン族の祖父に育てられる


インディアンへの迫害
自由と独立への闘い
挫折 そして 日本へ


日本国籍をとり 日本名 彌永光代
シャイアンにもらった名は
タシナ・ワンブリ 鷲の羽衣


あの日
彼女の灰色の目が
ぼくになにかをつたえてくれた


彼女に教えてもらったことを
これからすこしずつ
誰かに伝えていこう


そんなことの積み重ねが
たぶん
ぼくが生きるということなんだ


(写真は http://f.hatena.ne.jp/cantake/20050402043157 より
引用)